中国管釣り情報〜ルアーで釣っちゃいな〜

日本にお住まいの方には殆ど知られてませんが、中国の管理釣り場は近年凄まじい勢いで発展しており、まだまだ釣り場環境面は発展途上ではありますが、魚種だけで言えば既に釣り堀天国と言われるタイ王国をも遥かに凌駕してます。このブログでは中国国内のルアーフィッシングが出来る釣堀と、ルアーで釣った魚種を中心に紹介していきます。

国境の南

愚者は食べ物の話をし、賢者は旅の話をする。で、あるならば、私は愚かな旅人であろうか。

 

こんな書き出しで始まる、開高健「オーパ、オーパ !! モンゴル・中国 スリランカ篇」の”国境の南”という章に、こういう話が出てくる

一九八五年、七月のこと。広大な中国の広大な西北部、新疆ウイグル自治区のアルタイ山脈のなかにハナス湖※1という湖があり、ここで巨大な赤い魚が水面を泳いでいるのを新疆大学生物学科の向里該助教授※2とその学生達が発見した。
〜中略〜
魚体は九メートルから十二メートル、体重は推定一トン以上と推定した。これが「北京晩報」の一九八五年十一月七日から六回に渡って連載された記事のうちの実見の部分である。』

 

以上引用原文まま

※1 現在はカナス湖と呼ぶのが一般的. ※2 調べて見たところ、正しくは向礼陔 副教授であった.

 

 開高健氏はこの「北京晩報」の記事を目にしてから約三年後の1988年6月下旬、大红鱼(Huchotaimen フーチョータイメン)と思わしき巨大魚を狙いにハナス湖へ向かった。
 当時、中国、ソ連、モンゴルの三国が交わるこの国境地帯は、軍事的要衝として未開放地区になっており、外国人は当然として、中国人でも通行証無く立ち入る事は許されていなかったのだが、何とか日中共同取材という名目を取り付け、警備や未舗装道路補修の為の人民解放軍も含め、総勢70名の大所帯で、ウルムチから天山北路を一路、1060kmの道のりを車で3泊4日掛けてたどり着いたようだ。

 この模様は「中ソ蒙国境地帯大探査行 開高健の神秘の氷河湖に謎の巨大魚を追って」というタイトルで映像化もされているので、Youtube等で見つかるかも知れない。

 

 今年の春節休暇は、約二年間続いたゼロコロナ政策終了後、初の春節ということで、仕事にならない期間が想定外に長い(特に工場等は工員が戻らないので操業出来ない)事が土壇場で判り、急遽この”ハナス湖”迄のんびり時間を掛けて、”紅い何か”を狙いに行ってみる事にしたのだが、この国特有の諸事情により、ネイティブフィールドでの実釣に関わる事は、一切記事には書けませんので悪しからず。

 

2022年1月21日、中国では除夕と言い旧正月の大晦日にあたるこの日、16:17上海発のZ40次寝台列車(緑皮車)で、先ずは、東トルキスタンの首府であり、中国西北部最大の都市ウルムチへ向かった。

 

上海から車程4112km、途中、蘇州-無錫-常州--南京-蚌埠-徐州-商丘-開封-鄭州-洛陽-西安-宝鶏-天水-蘭州-武威-張掖-嘉峪関-ハミ-トルファン北を経由して、2日後の1月23日09:38にウルムチ駅へと到着した。中国には長いこと居るが、寝台列車(緑皮車)内で新年を迎えたのは初。車窓から散見する、打ち上げ花火や、爆竹の乱舞とは対照的に、車内で聞こえてくるのは狭い通路を挟んだ、向かいの三段ベット最上段で熟睡する同部屋乗客の大イビキ位だったのが些か期待外れであった。

 

 頭の中のプランでは、同日20:40ウルムチ発のK9735次という寝台列車(緑皮車)に乗り換え、上海を出発して3日目の9:40に、”ハナス湖”から車で約五時間半の場所に位置する最寄駅、アルタイ駅に着いて居る筈だったのだが、出発二日目に旅程を思い付き、タックル準備以外は殆ど下調べもしなかった事が災いして、ウルムチで足留めをくらう事に。

氷点下20度でも、ウルムチ市内の屋台はそれなりに賑わっていた。

 

 ”ハナス湖”が在るアルタイ地方は、2023年現在でも外国人の入域を制限しており、辺境パーミットと呼ばれる通行証を所得しなければ立ち入れなかったのだ。これ位は中国に住む者として、普通に考えれば直ぐ想像付きそうな事なのだが、完全に楽観視し過ぎていた。
 やむなくこの日はウルムチ泊とし、辺境パーミット所得に勤しむ事になるのだが、結論から言うとウルムチで計3日間も費やし”ハナス湖”行きを画策したが、今回アルタイ地方に辿り着く事は叶わなかった。辺境パーミットの所得自体は、力技が使える現地外国人向けツアー会社に依頼することで目処は立ったのだが、外国人がアルタイ地方に入域後、停留するには事前に宿泊先を確保し、地場の公安局へ報告する必要がある。しかし、その宿泊先が全く見つからなかった。

 

 そもそもアルタイ地方全体で、外国人客の受け入れが許可されてるホテル(ロッジ)自体が、調べた限りは4軒しかなく、当然4軒全てに問い合わせたのだが、2軒には問答無用で満室、1軒には外国人と言わずに、空き部屋が有るか訪ねたところ、有るという返答だったので予約を取ろうとしたのだが、私が外国人だと判明した時点で、やはり満室だったと掌を返した。恐らく面倒事はお断りなのだろう。

 

 そして、なかなか電話が通じなかった最後の一軒は、数年ぶりの大寒波で、アルタイ地方は氷点下40度位まで冷えこんでいた影響なのか、はたまた単に春節の影響なのか、空き部屋はあるが、アルタイ駅からの移動手段が皆無なので、ロッジまで来る事は出来ないだろうとの返事。アルタイ駅からロッジが在るブルジン県までの距離は約106km、丸一日費やせば歩けないこともないのだろうが、そこは氷点下40度の世界だ。更にこのロッジから”ハナス湖”迄は158km、恐らくここの移動手段も無いだろう。この現実は、”ハナス湖”行きを断念するのに充分過ぎる気温と距離だった。

 

 そこで、折角来たことだし”ハナス湖”以外の水系で”紅い何か”を探してみる事にした、時間はたっぷり有る。