中国名は黄金河虎。この魚は、まだ小学生の時分に学校の図書館で開高健著「オーパ!」第六章 ”水と原生林のはざまで” の挿入写真を見た時の衝撃を今でも覚えている。まさかこの魚をブラジルにもパラグアイにもボリビアにも行かず、中国で釣ることが出来るなど露程も思っていなかった。ドラドとはスペイン語の dorado 或はポルトガル語の Dourado で黄金という意味からきており、その呼び名からも想像がつく様に黄金の魚体が非常に美しい魚で、作家は「いつごろからか、南米のどこかの河に、”ドラド”という、全身が黄金色に輝くサケそっくりの魚が棲んでいると、知るようになった。 〜中略〜 背が緑、体側がイエロー・オレンジ、鰭が暗赤色、体側には首から尾にかけて切取線のような黒い線が何本となく平行して走っている。サケよりはるかに華麗な魚である。しかし、全身の形、それから尾の近くにあるかわいい舵取りのアブラ鰭など、すべての点でサケにそっくりで、学名もサルミニス・ブレヴィデンスとついている。ただし、サケよりも頭が大きくて丸く、歯が物凄い、下顎も厚くて強靭で 〜中略〜 高貴にして剽悍なる黄金の矢 〜中略〜 頭から尾まで全身に火薬がみっちりつめこんである。渾身の跳躍。不屈の闘志。乱費を惜しまぬ華麗。生が悔いを知ることなく蕩尽される。〜」と記している。これ以上の形容は有り得ないが、恐れ多くも一点だけ学名について指摘させて貰えばサルミニス・ブレヴィデンスという種はFishBaseやCatalog of Fishesを調べた限り存在しない、開高氏がドラド釣りに興じたのはパンタナルであるブラジル南西部ラプラタ川水系のパラナ河とピキリ川なので、分布から推定すれば4種現存するSalminus サルミナス属のSalminus brasiliensis サルミニス・ブラジリエンシスかSalminus hilarii サルミニス・ヒラリーであろう、分類学は年代によって解釈が大きく更新されてる事が多いので、執筆当時にサルミニス・ブレヴィデンスという学名が存在していた可能性を完全に否定はできないが。この黄金の矢は肉食性でベイトフィッシュやカエルなどの両生類、鳥なども捕食する貪欲な魚だが、ルアーへは全く貪欲さを発揮してくれず中々にセレクティブで、開高氏はアブのハイローを投げ倒したようだが、あれ系では難しい気がした。
種別:外来種
難易度:★★★
最大サイズ:100cm〜